『ドグラ・マグラ』について

 

最近電子書籍にも手を出してみました。

 

スマホにダウンロードすれば持ち運ぶ手間もかかりませんし、読み終わった後の置き場所や処分に困らないのは大きなメリットですね。

 

しかも著作権切れの本であればAmazon Kindleから無料で読むことができます。

 

こういった本の電子書籍化にあたっては青空文庫からボランティアの方々がやってくださったそうなのでありがたい限りです。

 

僕はドグラ・マグラを以前から読みたいと思っていたので、購入する前に無料の電子書籍版を見つけることが出来たのは少しラッキーでした。

 

この小説はジャンル的にはミステリーに分類され、精神病院で目覚めた記憶喪失の青年が自分の記憶に関わっているとされる事件を探っていく、というのが大まかな内容です。

 

こう説明すると、普通の探偵小説とあまり違わないように思われますが、ドグラ・マグラの特徴は中盤に挿入されている物語の奇妙さにあります。

 

主人公は記憶を探る過程で、精神科学の研究をしていたある博士の遺書を発見します。

 

その中には彼の論文やインタビュー記事、狂人に関する歌などが書かれています。

 

このパートが信じられない程に長いです。

 

長いと聞いて予想される2倍3倍はあるのではないかと思います。

 

さらにもう1つの大きな特徴は明確な主人公が設定されていないことです。

 

これは読者の中でも意見が分かれる所のようです。

 

 

有力な説の1つに「主人公=記憶喪失の青年」説があります。

 

僕が最初読み終わったときに考えていたのはこの説です。

 

少し引っかかる所はありましたが、良く言えば素直な読み方の1つだと思います。

 

そして2つ目は「主人公=読者」説です。

 

これは作中で、主人公が「ドグラ・マグラ」という本を手にした事を1つの根拠にしています。

 

登場人物の説明によると、作中の「ドグラ・マグラ」は狂人の青年が1週間寝ずに書き上げた世界でも珍奇な小説であり、理解するには繰り返し読まなくてはいけないが、理解する頃には気が狂ってしまうといういわくつきの本です。

 

人物や内容が一致している点からドグラ・マグラと作中の「ドグラ・マグラ」は同じものであるとし、ドグラ・マグラの世界に入り込みその内容に混乱する読者こそが、記憶を失った主人公であるという考え方です。

 

ちなみに「ドグラ・マグラ」の説明をするくだりで今後の話の展開と終わり方が明かされてしまいます。

 

つまりネタバレされる訳ですが、この作品に限っては殆ど影響はありません。

 

こういった話の作り方も奇書と呼ばれる所以なのだと思います。

 

 

そして3つ目は「主人公=青年の許嫁の胎児」説です。

 

突拍子もない説のようですが僕にはこの考え方が1番しっくりきました。

 

これは作中の「胎児の夢」という論文を根拠にしています。

 

胎児は母体の中で単細胞生物以来の進化の過程を繰り返しており、その記憶を夢として見ているというものです。

 

つまり主人公はまだ生まれてもいない赤ん坊であり「胎児の夢」を見る過程で青年の記憶を見ているのです。

 

記憶喪失の青年の記憶が完全に戻り、許嫁と結婚して、子供が出来てその子の夢オチだったら幾分救われると思うので、救われてほしい僕はこの説を推します。

 

 

ドグラ・マグラは決して1回読んだだけで理解出来る小説ではありませんし、今回文章の都合上言い切った部分にも僕の読み違いや矛盾点、他の解釈も沢山あります。

 

読み返せばまた違う発見があって違う捉え方も出来ると思います。

 

このブログでもネタバレはしていますが、これを先に読んだぐらいでは混乱するのは免れない内容だと思うのでぜひ頭を痛くしてみて下さい。

 

ちなみに混乱してきたらノートに登場人物や怪しい所、特に中盤では今何を読んでいるのかなんかを書き出しておくと次回読む時に無駄な混乱が起きないのでオススメです。

 

 

 

 

ドグラ・マグラ

ドグラ・マグラ